ヨウ素は実に多岐の分野にわたって活用されています。私たちの現在の暮らしに密接に関わり、近未来を開拓していく優れた資源でもあります。
X-線造影剤
ヨウ素の最も多い需要は、X線造影剤で、血管や各種臓器の診断に用いられています。
これはヨウ素原子の大きなX線吸収能を利用したもので、1929年に医師ストックが尿路系のX線造影に成功。その後様々な方法が確立されてきましたが、ヨウ素は医療画像診断に圧倒的な支持を得ています。
甲状腺ホルモン剤
甲状腺ホルモンは脊椎動物全てにあり、成長や基礎代謝をコントロールする最も重要なホルモンで、ヨードを含む構造です。例えば、甲状腺機能低下症患者に甲状腺ホルモン剤をT4(L-サイロキシン)の形で補い、治療します。
放射性ヨウ素医薬品
ヨウ素には様々な放射性同位体が存在しています。その線質、エネルギーおよび半減期に応じて、画像診断薬や治療薬、体外診断薬として利用されています。
ヨードチンキ、ヨードホール
殺菌剤のヨードチンキは1839年に創製されました。1949年にはヨードホールが開発され、現在まで殺菌・防カビ剤として長く利用され続けています。
うがい薬や消毒薬などのPVP-I(ポピドンヨード製剤)は大きな市場を確保しています。またヨウ素系乳頭消毒剤や活性炭ヨウ素など、ヨウ素の殺菌・防カビ効果を利用した商品開発も活発におこなわれています。
IPBC、DMTSなどのヨウ素系剤
ヨウ素系殺菌・防かび剤は、古くから使用されているが、最近でもその効果、環境への影響等が見直され、需要が増加しています。例えば、海外の内装用壁防かび剤としてのIPBC,また木材防腐用のDMTS(従来品の代替進む)等が代表的です。
LCD用偏光板
LCDは液晶テレビやパソコン、デジタルカメラ、携帯電話など様々な製品に使用され、その用途と市場は急速に拡大しています。
偏光板は液晶パネルの上・下面に設置され、偏光特性、色相、均一性は表示品位を左右します。
LCD偏光板は偏光子と呼ばれるPVAフィルムに二色性染料のポリヨウ素を吸着させますが、ポリヨウ素からなるヨウ素系偏光板は偏光特性(高透過率、高コントラスト、色相調整、耐久性能等)が高く、LCD用の主流となっています。
ドライエッチングガス
液晶パネルの表示電極として用いられるITO(インジウムスズ酸化物)薄膜のパターニング加工で、近年高精度なエッチング加工の要求が高まり、従来のウェットエッチングからドライエッチングへの転換が進んでいます。エッチング用ヨウ化水素は高純度無水の品質が重要で、インジウム化合物のエッチングに優れ、唯一液晶量産ラインで使用され、今後の需要増加が期待されます。
色素増感太陽電池
太陽電池が高効率を発揮するためには、多くの光を吸収し、有効に電荷分離し、それを集電できることが必要です。色素増感電池はそれらの条件を満たす可能性を大きく持っています。
その色素増感太陽電池の電解液は溶剤、ヨウ素イオン、ヨウ素からなります。
政府は新エネルギーとして、色素増感太陽電池を2030年に全電力の10分の1を太陽光でまかなう計画を推進中で、ヨウ素は電子運搬の担い手として重要な役割をはたすことになります。
導電性ポリマーとヨウ素ドープ剤
通常絶縁体として電気を流さない有機物に対して、ヨウ素は導電性を与えるためのドーピング剤として働きます。例えば、一重結合と多重結合が交互に連なった共役系高分子にヨウ素などをドープ剤とすることで導電性が実現します。ポリアセチレンの薄膜化とヨウ素を使用したケミカルドーピングによる次世代の電気・電子材料として期待されます。
樹脂の安定剤
ヨウ素はポリアミドの化学的劣化防止のため安定剤として利用されます。ポリアミドは、自動車や電機の分野に樹脂・繊維として広い用途を持ち、安定剤としてハロゲン化銅(CuI、KI・NaI)が主として使用されています。また、ヨウ素は紙の増量剤、インク樹脂、接着剤用のトール油脂肪酸、トール油 ジン等の安定剤として使用されています。
機能性フッ素化学製品
1938年、DUPONT社により、最初に市場に出ました。用途は機能性フッ素化学品、撥水撥油剤、界面活性剤などに、広範囲に利用され、ヨウ素需要の約10%が消費されています。製造法は、テロメリゼーション法という合成法が用いられ、パーフルオロアルキル化合物がヨウ素化合物を経由して目的物が合成されます。
ヨウ素レーザー
化学酸素ヨウ素レーザー(COIL)は、過酸化水素と塩素との反応によって生じる励起酸素にヨウ素を混合すると、共鳴エネルギー交換によって励起状態のヨウ素原子が生成され、このものが基底状態に戻る際に放出される光によるレーザーです。波長1.3 μmの近赤外領域光を発進し、高出力のレーザーで、溶接や特殊用途での利用が期待されています。
フォトポリマー(感光性樹脂材料)
フォトポリマーは印刷(製版)材料や印刷インキ、コーティング材料、半導体の微細加工などに使われる光リソグラフィ材料、医用成形材料、ホログラムなどの光情報記録材料など様々な分野で使用されています。
フォトポリマーに利用されているヨウ素化合物はヨードニウム塩で、光によって分解する性質をいかして、光開始剤として使用されます。
ヨウ素添加塩
ヨウ素が不足すると甲状腺に異常が発生しやすくなります。食塩にヨード塩を添加して、ヨウ素を摂取します。
安定ヨウ素化剤
原子力発電所の事故などで甲状腺障害を起こさないように、予防として被爆前に安定ヨウ素で、甲状腺のヨウ素を飽和させます。
飼料添加剤
動物のヨード欠乏、卵や牛乳の生産増、伝染病予防に飼料用として、ヨウ素化合物が利用されています。
超イオン伝導ガラス
ガラスといえば、透明な絶縁体というのが一般常識ですが、ガラスにヨウ素(AgI)が入ると、電気をよく通す常識破りの材料となります。 ヨウ化銀をベースとする銀系超イオン伝導ガラスは燃料電池や全固体電池、センサー、表示素子などへの応用が期待できます。
アルミニウム(ヨウ素化合物含有アルマイト)
このアルマイトの微細孔にヨウ素化合物を含侵することで、ヨウ素化合物の優れた特性である抗菌性や抗カビ性を付与します。さらに機械的な摩擦の減少によるエネルギー消費の節減効果、部品類の長寿命化等で省エネルギー、省資源対策に貢献します。
